ある精神障害者の戦い

逮捕歴5回。躁うつ病、ADHD、アスペルガーの精神病者。障害手帳2級。大学院中退→ニートなどを経て再び自営業者になりました。

精神科閉鎖病棟の入院に関して ー実体験を振り返るー

anond.hatelabo.jp

 

少し前の記事だが、このような体験談が投稿されていた。

私は「措置入院」ではなく、「医療保護入院」で自己の意思に反して精神科閉鎖病棟に約1ヶ月入院していた。

その体験を綴っておこう。

 

 

措置入院医療保護入院の違い

相模原市の障害者施設「津久井やまゆり園」の事件で多くの方が「措置入院」という言葉を聞いたと思うが、現実にこれが適応される時は行政(警察)の目から見てヤバい時である。

これはあとで行政が訴えられないようにするためであるからで、本人が自らの意思で措置入院による保護を求めても認められない(これは自分で自分のことがヤバいと思っている状態は、まだ比較的正常なのかもしれない)。

 

精神科に入院する方法としては次の3つである。

 

1:自分の意思で入院する任意入院

2:患者本人に入院の意思はなくとも、保護者(家族)が同意すれば入院させられる医療保護入院

3:緊急に入院させないと自殺や他者へ危害を加える恐れが極めて高い患者に対して行政命令で入院させる措置入院

措置入院-保護者のあり方

私の医療保護入院に関しては、医師 2人の診断があった。

もしかすると、措置入院を適用したかったのかもしれないが、医師のどちらかが反対したのかもしれない。

 

行政処分で個人の自由を奪うわけであるので、一般人から見るとかなりヤバい状態である(本人はそんなことは決して思っていなかったりするのが一番やっかいなところかもしれない)。

 

措置入院医療保護入院の患者数

措置入院は強制入院となるため、行政裁判などのトラブルになる(こともある)。

そのため措置入院数は次のデータで見る通り、年々減少し、現場の運用においては医療保護入院となる。

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http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/eisei_houkoku/15/dl/kekka1.pdf

このように、

平成 27 年度の一般・警察官等からの「申請通報届出数」は 25,922 件で、前年度に比べ 1,193 件(4.8%)増加している。また、「申請通報届出のあった者のうち診察を受けた者数」は 9,484 人で、前年度に比べ 390 人(4.3%)増加している。(表1) 平成 27 年度末現在の「措置入院患者数」は 1,519 人で、前年度に比べ 40 人(2.7%)増加して いる(表1、図1)。 平成 27 年度の「医療保護入院届出数」は 177,640 件で、前年度に比べ 7,561 件(4.4%)増加 している(表1、図2)。

となっており、措置入院数は減少しているが、医療保護入院数は増加している。

また、

平成25年度衛生行政報告例[2]によると、平成25年度に全国で精神障害者申請通報件数は23177件、診察を受けた者9404人、法第29条該当症状の者6767人である。また年度末措置入院患者数1482人であるから、平均的にこの人数が全国の毎日の措置入院在院者数であるとすると、1482÷6767×365=約80日が措置入院の平均日数であると考えられる。

措置入院 - Wikipedia

津久井やまゆり園のように2週間程度で出るというのは、こういった観点からも異例であり、早くても1ヶ月程度というのが実態であると考えられる。

入院生活

私が入院した精神科の閉鎖病棟は通信機器やカメラ機能が付いているものは一切仕様不可能であった。

これは、精神科閉鎖病棟というある種の特殊な空間のプライバシーを守るためである。

また精神的に異常な状態である時には、不特定多数の人にずっと電話をしてしまう人もいるため、それを防止するためである(わたしはこの症状がみられた)。

外部とのやりとりは手紙または公衆電話からかけるというのが一般的である。

しかしながら、近年は利用者の人権を少しでも守ろうという医療現場も広がっているので、限定的にメールができる時間が設けられたりしている。

 

 

その他

閉鎖病棟への入院経験(実績)があると障害者手帳の取得は比較的容易である。

さまざまな特典があるので、比較的寛容になった世の中であるため取得するべきだ。

しかし、医師が診断書の書き方を知らないと、障害者手帳の取得が難しくなったりする。

ちきりんさんが次のように言っていたのが少し印象的だ。

 

 

医師は不正とまでは言わないが、手帳が必要だと感じると、それに合わせて少し重く診断書を書いたりする人がいる。

これは過去に制度を利用してズルをした人がいるため、行政の審査が厳しくなっているためである。

しかし生活保護と同じだが、本来必要な人が障害者手帳を受給できなかったりするのが非常に問題である(全ての精神科医障害者手帳の取得に関して詳しいわけではなく、社会福祉士精神保健福祉士が制度には精通している)。

AIが機械的に診断書を書き、AIが判定するようになれば、手帳の受給も早くなり、審査請求をする人の人数が減るため、必要な人への支給も早くなるはずだ。

http://www.soumu.metro.tokyo.jp/12houmu/pdf/toushinnaiyou/28/30.pdf

 

精神科閉鎖病棟の入院システムに関しては改善されるべきであるが、津久井やまゆり園の事件を受けて、「措置入院」や「医療保護入院」に関して大変厳しくなった気がしている。

この点に関しては、実際の運用を当事者として今後注視していきたい。